F1映画評:賛否両論のレーシングドラマ
視聴者からの意見
ラジオネーム 猫のちしりさん(賛成派)
この作品を「間違いなく過去最高のレース映画」と絶賛。
特に、F2車両をベースにした本物の車にブラッド・ピット自身が乗り、実際のレーストラックを走行するリアリティを高く評価しています。オンボードカメラや斬新なカメラワークも、「これまでにない興奮」を与えてくれたと述べています。
実際のイギリスグランプリでフォーメーションラップの最後尾を走ったことや、現地の会場・関係者・他のチームドライバーが本物だった点にも驚きと興奮を表明。
物語については、ブラッド・ピット演じるソニーを「傲慢に見えるが、経験と知識に裏打ちされたクレバーなベテラン」と評価。古臭く見えるコースのランニングも、実際には路面状況を把握するための合理的な行動だと理解を示しています。
また、赤旗を利用した戦術やピットストップ作戦もエキサイティングで、弱小チームがポイントを獲得することの価値を生々しく描いていた点が印象的だったとのこと。
F1特有の専門用語も、実況による解説のおかげで初心者にもわかりやすかったと述べています。
唯一の不満点は、予選の描写がほとんどなかったこと。テンポ重視の編集だと理解しつつも、レースは予選から始まっているため、省略は惜しかったと語っています。
総じて、FIA(国際自動車連盟)の全面協力により、「グランプリにいるかのような唯一無二の臨場感」を体験できたと総括しています。
佐原テイラさん(賛成派)
すでに4回鑑賞し、「2025年ベスト間違いなし」と断言。
F1は全くの初心者ながらも、映画としての面白さを強調。脚本は「超王道」であり、そのストーリー展開の王道感がたまらないと感じています。
伏線の回収も丁寧で、冒頭から提示される「主人公がなぜ走るのか?」という問いが中盤で明かされ、クライマックスへつながる構成を高く評価。観客が「やってほしいこと」を全てやってくれる映画だったと述べています。
IMAXで撮影されたレースシーンは大迫力で、ソニーを中心とした人間ドラマも充実。F1がチーム競技であることが伝わる内容になっていたと語ります。後半では感動と興奮で涙が出たとも。
ブラッド・ピットの代表作になると確信し、IMAXスクリーンで観るべき作品だと強く推奨しています。
ラジオネーム 風ンバーグさん(反対派)
20年以上のF1ファンでありながら、「非常に残念な出来」として否定的な意見を表明。
最大の問題点は、ソニーが「車の中で死ぬのを選ぶ」という発言。このセリフは、1994年のアイルトン・セナ事故以降、安全を最優先にしてきた現代のF1の理念に真っ向から反するもので、有害だと批判しています。
また、映画がF1側の公認を得て制作されている点にも強く反発。中盤のリスキーな「プランC」の描写なども容認できず、F1側の判断を疑問視しています。
さらに、ソニーとケイトのロマンス描写にも強い疑念。女性初のテクニカルディレクターであるケイトが、ブラッド・ピットと同じベッドにいる展開は彼女を軽視するものであり、多様性や包括性を推進するF1界に逆行すると指摘しています。
脚本全体も「伝統的ハリウッドの王道をなぞるだけ」で、上司と部下の関係性の描写不足や、薄っぺらい悪役の登場など、粗が目立つとしています。
ただし、良い点としては、レース映像とエンジン音の乖離がなく、極めてリアルな描写だったことを挙げています。これは現役F1レーサーのルイス・ハミルトンの助言が活かされている結果だと評価しています。
宇多丸の映画「F1」分析:極上の鑑賞体験
映画「F1」について、ライムスター宇多丸さんは「非常に面白い」「一見の価値あり」と高く評価。IMAX字幕版を2回、日本語吹替版を1回観ており、IMAXでの鑑賞を強く推奨しています。
映像と体験
監督ジョセフ・コシンスキーと撮影監督クラウディオ・ミランダのコンビによる、デジタル的にゴージャスな映像美がIMAXで真価を発揮。
例えば、ソニーとチームオーナーのルーベンが並んで座るシーンでは、縦長のIMAX画角が孤立感を印象的に強調していました。
また、「トップガン マーベリック」でも使われた高画質カメラが車体に取り付けられ、ブラッド・ピット本人が運転しながら演技をする映像は非常にシャープで、臨場感抜群。
F1の全面協力により、これまでのレース映画で見られた「映像と音の乖離」がほとんどなく、「映画史上最もリアルなレース映画」と評しています。
ストーリー構造とF1の背景
この映画を「古い酒を新しい袋に入れた」作品と表現。
「古い酒」は西部劇的な英雄譚、つまり旧来のマッチョなハリウッド的価値観であり、「新しい袋」は現代のF1という複雑な現実世界。
この構造が可能になった背景には、Netflixのドキュメンタリー『Drive to Survive』の成功と、『トップガン マーベリック』の商業的達成があると述べています。
F1側が本作を公認したのは、「駆け引きやルールぎりぎりの裏技など、速さ以外の“ゲーム性”」をアピールしたかったからではないかと分析。また、F1があえて「嘘の演出」を広報戦略として容認していると見ており、それも本作の面白さの一つだと語っています。
ソニー・ヘイズというキャラクター
ソニーは、傲慢に見えつつも経験豊富でクレバーなベテラン。
常にニヤニヤしつつ本心を見せず、その中に「濃厚な影」があり、ブラッド・ピットでなければ成立しないキャラクターだと高く評価しています。
ジャーナリストからの「年齢とキャリアへの疑問」を受ける展開は、Appleドラマ『テッド・ラッソ』と同じ構造であると指摘。終盤の「悟りゾーン」へ至る描写も、F1ドライバーとしての境地をリアルに描いていると述べています。
批判的意見への反応
風ンバーグさんの批判に対しては尊重を示しつつも、「ブラッド・ピットだからこそ、あのロマンス描写も“仕方ない”と思わせる魅力がある」と反論。
脚本の粗についても指摘しつつ、全体としてはこの映画を「最新技術とハリウッド王道の融合による、極端で贅沢なF1体験」として肯定的に評価しています。
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